月、火、水、木、金、土、日。
建築をつくり上げていく際に大事なキーワードになると考えています。
ものづくりにかかわる人が、これらの言葉から連想する独自のイメージを、
お互いに共有しながらものづくりを進めれば、
これまでにない素敵なものができあがると考えています。
月育
月明かりを楽しむ
満月の月明かりは、ほぼ1ルクス。建築基準法で求められる非常用照明による必要照度と同じです。1ルクスあれば、大体のことはできます。今の住宅は、明るい照明が好まれる傾向がありますが、すべての部屋が、隅々まで明るい必要があるでしょうか。
建築の中に、明るい部分と暗い部分をつくることにより空間に深みをつくれます。深みが生まれると同じ空間が昼と夜で違った雰囲気になります。暗さを楽しもう。たまには月をみよう。を実践しています。
火育
火をうまくコントロールする
木造建築の中に「火」を使って本当に大丈夫?と思われるかもしれません。でも、よく考えてみると、人間は火を上手に扱えたために進化し、建物の中で、調理、明かり、採暖などに使ってきました。木材を燃やすことで、生活に必要な様々な機能を得てきたと言えます。でも、建物の木材が燃えるのは嫌です。そこで、普段から、「安全に木材が燃える」ことを体験することで、どうすれば木と火が共存できるのか、考える機会を増やしたいと思います。可能な限り、ガスコンロ、薪ストーブを取り入れていきます。
水育
水を積極的に貯める
普段はあまり気にもとめないことかもしれませんが、地震や台風などの災害時に、水道や電気が止まると建物の中には水が供給されません。そんなとき、頼りになるのが、建物に溜まっている水です。タンク式トイレの水、お風呂の水、受水槽の水、タンク式太陽熱温水器のお湯、雨水貯水槽の水などです。飲み水に適さないかもしれませんが、トイレを流したり、洗い物をしたりと利用範囲は意外にあります。日常が素敵になるだけでなく、非常時に最悪にならないよう意識した設計を心がけています。
木育
木の良いところと良くないところを知る
木材は、鉄やコンクリートと異なり、山で毎日成長している生物材料です。それを建築に使うためには、たくさんの人の知恵と努力が必要となります。立木はたくさんの水を含んでいますが、建築に使うには含水率を20%以下に減らす必要があります。丸太を板や柱に加工して、乾燥し、表面を綺麗にけずって、端部を加工する。その途中に割れたり、反ったりと、人間と同じようにいろいろです。木のことをもっと知ろう。山に行こう。を実践しています。
金育
銅、アルミ、鉄など金属の長所を活かす
木造建築は木材だけではつくれません。窓はアルミや鉄、樋は銅やガルバリウム鋼板と、水がかかる部分は、木材の耐久性に不安があるので、金属の助けを借ります。金属というと、堅くて強いイメージがありますが、実は熱を伝えやすいので、寒い日には金属表面で結露を起こしたり、火災時に曲がったり、溶けたりと必ずしも万能ではありません。木、金属、コンクリートの長所短所をしっかりと理解して、長所は伸ばし、短所は補い合う使い方をするように心がけています。
土育
土を建物に活用する
土は昔から建物の壁に塗られてきた素材です。今でこそ、せっこうボードやサイディングに置き換わりましたが、戦前は当たり前のように土を使っていました。この土は田んぼの下などにある粘土が使われますが、ある厚さがないとなかなか塗れません。そのおかげで、蓄熱がとても得意な壁になります。ストーブ・エアコンの近くや冬に太陽光の当たる壁に土を塗り、蓄熱させると壁からの輻射熱でほんのり暖かな空間となります。断熱という言葉が有名ですが、蓄熱も積極的に設計に取り入れていきます。
日育
太陽を利用する
太陽のおかげで、昼間は明るく、暖かく、気持ちよくなります。一方で、真夏は直射日光が入ると暑すぎることもあります。ちょうどいい塩梅の設計が良さそうです。
窓からの採光、太陽光発電による電力利用、太陽熱温水器による熱利用、冬の直接光による採暖、夏の直接光の制御による室内の温度上昇抑制など、太陽からの恵みのうち、季節ごとに“ほしいもの”と“あまりほしくないもの”をしっかりと分けて、庇、ブラインド、障子など建築の装置も設計に取り入れていきます。