2.つかう
長い時間に渡り建物を使いつづけるためには、地震や火災などの災害に対して安全であること、災害が起こってもライフラインが保たれ安心していられることが重要です。また、木材を建物に使うときは、紫外線、シロアリ、腐朽菌などによる劣化に対し適切な設計とメンテナンスを施す必要があります。“八ヶ岳の秘密基地”の設計では、これらの使い続けるための工夫をできるだけ盛り込みました。
安全につかう
日常を快適に過ごす空間が、非日常にも安全である建物として機能することをいつも心がけて設計しています。秘密基地では、地震の際に耐震要素となる筋交いや壁をバランスよく配置し、耐力壁がお互いに助け合い、有効に働くように構面となる床、屋根としています。また火災に対しては、基地内で出火したときに燃え拡がりを抑えるために、主な壁は不燃材料のしっくい仕上げとしています。加えて、暖をとる薪ストーブからの出火を抑制するため、薪ストーブの背面に遮熱板を設けています。これらの対策で安全につかえる建物は、都市部でも建てられる仕様になっています。
安心してつかう
秘密基地では、日常に必要なインフラを整えることはもちろんのこと、非常時にも一定期間生活を継続できる仕組みを取り入れています。たとえば、電力は、太陽光発電パネルと鉛蓄電池による独立電源により確保し、給水には受水槽を設け、給湯は太陽熱温水器により水を温めています。また暖房器具は薪ストーブとし、キッチンにはガスコンロは設置せず、カセットコンロを取り入れることで、薪やボンベなどの必需品は、日頃から備蓄しながら使用し、安心してつかえる建物としています。
つかい続ける
木造の建物は、シロアリの被害や水が溜まることによる腐朽など弱点もありますが、これらの経年劣化を前提とし設計の工夫と定期的なメンテナンスで、子供や孫の世代にも100年単位で受け継ぐことのできる建物です。秘密基地でも、躯体や仕上げ材の木材を紫外線やシロアリなどから守るための工夫を盛り込んでいます。たとえば、基礎を高めにして地面との距離をとることや、雨がかかりやすい外壁廻りは、仕上げを焼スギ板とし、雨のかかる建具には木材を用いないなどの工夫をしています。また縁側など外部の水平面に木材つかう部分には、大きな軒をだし、水に濡れてもすぐに乾くディテールとしています。